パンツ透ける生地|製作記録(ビスポークスーツ)

Roadのスーツには「紳士服地」が必須です。

機能の上での耐久性、 デザインの上での永続性、

何よりも「エッジが効いた感性」を表現するためには「紳士服地」が欠かせません。

 

今回使用した生地は透けています。

夏場のスーツ地で涼しいのはいいが、ポケット袋やその他もろもろが見えるのが難点。

その難点を補うため、仕立てに工夫を凝らしました。

 

 


グレー色のオーダーメイドのスーツを着た女性
メンズ仕立てのレディーススーツ

<仮縫いパンツ>

仮縫いは頭を悩ませます。

ちょっとの判断ミスで、泥沼に陥ることにもなるからです。

「完成度の高い仮縫い」にするため、様々なことを想定します。

パンツをトルソーに着せて、こねくり回しているだけなら楽なんだけど・・・

 

人が穿いてどう見えるか?だけにかかっている。

 


<花柄ポケット袋布>

オーソドックスなメンズパンツのポケット袋布は分厚く、

乱暴にものを入れても破れないように耐久性があります。

今回パンツ表地の柔らかさに合わせ、ブラウスに使用する生地をポケット袋にしました。

軽いし、見た目楽しめ、何より可愛い。

 

ジャケットの裏地に柄を使用される例は沢山あります。

ジャケットを脱いだ時チラ見えして、傍で見ている人も楽しめます。

一方、パンツを脱いで裏側を人に見せることなどない。

これこそ着用者ご本人しか楽しめない自己満足そのものです。 

 


<パンツ後ろ身頃にも裏地>

普通のレディースパンツには、後ろ身頃にも裏地が付いているタイプがありますが、

スカートの裏地のように「ただ浮いている」付け方がほとんどです。

これは表地と裏地を一体化し、「ポケットの柄が表から透けて見えないやり方」を採りました。

結構な手間を要します(涙)

 

画像はパンツの裏側。

真ん中の縫い目が脇線で、左側が前、右側が後ろ。

 


<千差万別の美しさ>

パンツは穿く人の体型によってシワの出方が千差万別です。

既製服ではターゲットとなる人達が穿いて「そこそこ」に見える設計をしますが、

オーダーの世界の技術者達は、その個人の体型に合った「補正」という神業をかけて、

美脚パンツを追求しています。

 


<究極の自己満足>

穿く時にチラ見えする花柄のポケット袋布。

出来上がりはこんな感じです。

穿くご本人しか楽しめない、究極の自己満足。

作り手としては単調さから解放され、縫っていて結構楽しい。

 


<透け防止+美脚シルエット>

透ける表地の対処法として、後ろ身頃にも裏地を付けました。(透け防止策)

その裏地の仮止めの糸がうっすら見えます。

通常のレディースパンツにも裏付きはありますが、

大きく異なるのは「あくまでも表地と裏地を一体化するための躾糸」である点です。

 

表地同様、裏地も一緒に「くせとり」というアイロン処理で立体化をし、

美脚シルエットを形成します。

 


<生地の調理法>

仕立て映えしなさそうな生地の調理法を考える時ほど、考えることが多く悩ましい。

段取りの段階で判断ミスをしてしまうと、どんなに気を遣って縫い上げても理想の形にはなりません。

縫う前の、パターン設計と付属の選定の2つにかかっています。

 

これが上手くはまると、想像以上の形になり「新しい世界」が現実のものとなります。

 

レディースほど華やかさがないメンズの材料と手法で製作し、

最終着用された方が自信に溢れるご自身でいられたら、悩み甲斐があったということになります。

 

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