透ける生地をジャケットに仕立てるのは、難易度はパンツより大変です。
仕立てで気を付けなければならないポイントが2つあります。
① 中に使う付属の色が透けて見えないかの確認。
表地と付属(毛芯、ポケットの袋布、裏地)を合わせて違和感がないか?を気にすることが必須となります。
② 透ける生地 = 構築性に欠ける。これをなんとか形になるように、付属(毛芯)の選
択でミスしないように熟慮が欠かせません。
Roadは躍動感と高級感を併せ持つ「ビスポークスーツのレディース専門」で、紳士服地を使用します。
生地に合わせた仕立ての幅の広さで、1着1着その生地が持つ魅力を最大限に活かし、スーツの永続性を突き詰めます。

<毛芯>
ジャケットの土台、骨格となる「毛芯」。
既製用の毛芯なら付属屋さんで売られていますが、
「狙った形」を作る為、手作りしています。
これを使用することで独特の丸み、むっくり感が生まれ、シルエットの格調が高まります。
表からは見えない、必須アイテム。
毛芯にも種類がありますが、ここで使用したのはノーマルタイプ。
結果、「十分に表地を支える役割」を果たしてくれることになりました。
<パターン設計>
算数の学習障害がある自分は、小2の頃から九九が言えません。
筆算しても普通の人よりかなり遅い。
でもパターン(型紙)引ける。
「概念、大まかな意味内容を把握する能力」さえあれば、
電卓使って作図できる。
概念+ツール+繰り返し行う頻度で補うことができる。
表地の特性を把握し、本質を活かす作図を心掛けています。
<芯据え>
「毛芯」というベージュ色のウールの芯を表地に据えます。
大変地味な付属ですが、服の匂い、テイストに関わる縁の下の力持ち。
表地と一心同体となり、本格的なジャケットを構成します。
薄くてテロテロの生地が余分なシワなく、形に出来るのは全て「毛芯」のお蔭です。
<衿作り、衿付け>
ダック芯(ベージュ)・・麻芯に糊付けされパリッとしたもの。
カラークロス(濃いグレー)・・衿の裏側に使うフェルト状のものの組み合わせで、
通常のレディースのような、衿プラス肩とは異なる形状となります。
衿から肩にかけて「富士山のような滑らかなカーブ」が形成されます。
これがなんとも美しい。
<袖なしの状態>
袖なしの状態で、服のシルエットが良く分かります。
昭和の時代、テーラー業界におられた村田金兵衛先生が、
「シルエットの美は服の構造を左右する」と書いておられました。
その言葉は永続的価値があり、肝に銘じて仕事をしています。
薄地でも、ここまでのシルエットは出せる。
またこのデータを活かして次に繋げる自信となりました。
<手縫い釦ホール>
手縫いの釦ホールですが・・
「近くのブツ撮り」が超苦手です。
カメラのレンズを変えて撮影できるようにしないといけない段階にあります。
魅力が伝わりづらく申し訳ありません。
マシーンの釦ホールより、エレガントで服の格調を高める役割を果たします。
この後、仕上げプレスに入ります。
<着画>
このテロテロの薄地の生地名は「トロピカル」。
特に夏向きの軽い生地で、これはトロピカルの中でも「昔の年配の男性が好むような紳士服地」。
ビスポークの仕立てで、レディーススーツにしたら生地の魅力が倍増しました。
生地の柔らかさが女性の体型の「曲線美」を活かしてくれて、
「控え目な美しさ」を放つ、紳士服地の底なしの可能性を感じます。

<斜め後ろ姿>
男性と女性で、服を着た時の「着眼点」が異なるのを何度も目にしました。
女性は「斜め後ろ姿」をやたら気にされる傾向があります。
男性社会にズブズブに慣れ親しんだ身としては、バレないよう、冷静な態度をとりながら
「そこ、気にするん?」と驚いています。
その度に新しいチェックポイントとして大変勉強になり、
服作りのレベルが上がる良い機会となります。

<完成>
「こんな薄地でも、曲線スーツになる、レディースでも使える」を実践しました。
◇これが仮にレディースの生地だとしたら・・・
エッジが効いたシャープさが失われる。
◇これが仮にレディースの仕立てなら・・・
ハリがなく、余分なシワが増え、高級感が失われる。
新しいものは、異分野の掛け合わせで生み出されます。
Roadは【紳士服地×メンズ仕立て×レディース】による他にはない美しさを目指します。
着る人の個性が活きる1着となることを願って・・

TOPページ|手仕事によるレディースオーダースーツ > ブログ >ビスポークスーツ|透ける生地ジャケット