
「こんなにも、違うのか・・」
感性に性別がはっきり出るのがテーラードというアイテムです。
実体験をもとに書きました。
<美的感性の違いはどうして?>
「普通のレディースのジャケットと、どこがどう違うんですか?」
「メンズの本格的なジャケットと同じ仕立てです。
肩から胸、ウエストにかけて余計なシワが入らず高級感が増して、
グレードアップして見えます。機能性も伴っています。」
これは女性とよくするやりとりです。
オーダースーツ(レディース)を提案していると、テーラード(背広)というものが、
いかに男性向けのアイテムであるかを思い知らされます。
「男性で背広好きの方」なら見るだけで理解してもらえる感覚。
「興味をお持ちの女性」なら着用して気付いてもらえる感覚。
そうではない女性にはなかなか通用しない。
これは洋服の業界の方、一般の方、問わずである。
その度にテーラードという最高にシンプルなアイテムに於いて、
男女で見るポイントが違っていることを確信する羽目になります。
身に付けるアイテム、服、アクセサリー、鞄、靴などほど、
「男女の感性の違い」がハッキリしているものはありません。
その中でもテーラードというアイテムは、もともと軍服を起源とし、圧倒的に男性の感性が反映されたもので、「男性の審美眼に叶う美しさ」に昇華されたものだと認識してはいますが、しかし何故、究極にシンプルなテーラードに於いて、こうも男女で著しく異なるのか・・
身に付けるアイテムに対しての男女の感性の違いは、一体どこから来るものなのか?
悩んだ末「男女の感性の違い」をChatGDP先生に聞いてみると、以下のような回答をされました。
■ 生物学的要因
1. 男女で脳の構造やホルモンの影響の違いによるもの
2. 原始時代のライフスタイルによるもの
男性は狩猟を担当
(距離感、方向感覚がデザイン感覚に影響している)
女性は採集を担当
(果物、植物の見分ける能力が必要で色彩感覚が発達した)
■文化的要因
3. 男女で異なる社会的役割が割り当てられてきた。
男性には「男性らしさ」
女性には「女性らしさ」を社会が求めてきた。
4. 身に付けるアイテム(服、アクセサリー、バッグ、靴など)を提供する側が「男性用」「女性用」と感性を区別することが多く、これが固定観念を生み出している。
と書いてありました。
ChatGDP先生に共感できる部分もあるけど「ん?」と思う部分も多々あり、
ここで「テーラード」を絡めた個人的感想を挟みます。

<結論、提供する側の固定観念では?>
男性より女性のほうが、色彩感覚が発達したとは単純に思えない。
ファッションの世界、特にモードの世界に於いて、卓越した色使いをされる男性デザイナーの方々が数多くおられ、
素晴らしいレディースを生み出しておられるのは事実であること。
一方、主に男性が作り手となるメンズ(紳士服地を含む)には、一見分かり易さ派手さはないが、深み、奥ゆかしい美しさがあります。
そこに機能性が加わり、月日を経ても変わらない永続性があり、飽きることがありません。
メンズテーラードを生業とされている技術者の方々の拘りはレベチで、
傍で見ていて「そこまでするの?」と、目が点になるようなことを普通にされるオタクの人達が多い。
ドレスを製作される方々(主に女性)とは違った緻密さを保持されています。
文化的要因の、社会が求めてきた男性的、女性的役割に関しては、
「大昔はそうだったと思うが、いつの時代の話やねん・・」という感想。
共感できたのは最後の項目で、
「提供する側が男性用、女性用と感性を区別し、固定観念を生み出している」
という部分です。
個人的な体験を綴ります。
女性が大半を占めるレディースアパレルにいた時は、
「メンズの背広なんて、みんな同じ。デザインあらへん。」
「メンズはよく分からない。」
「メンズとレディースは別物。」
という声をよく耳にし、過去の経歴においてメンズ(背広)をやりレディースに転向した身としては、一人寂しい想いをしました。
服の業界の人達でもこうなので、一般の方が特に女性が「背広の違いが分からない」と思われるのは当然だと思う。
男性中心のテーラーの世界では、
「女性が背広をやる意味が分からない。」
「女性がやるのは、ベスト縫いとパンツ縫い。男性がジャケットを縫う。」
「△△さんていう女性が縫ったものはポワーンとしていて、○○(店名)ではアカンって言われてん。でも××(店名)ではいいって言われてん。そういうのもあるんやでぇ・・」
「へーっ、女の人が上衣、縫ってんの?」
と意味不明の摩訶不思議なことを真顔で言われたり、忸怩たる想いをした経験が山ほどあります。
服の業界にいる人達でも、メンズとレディースは「別物」ととらえ、今携わっているアイテムをやり続け、職業人人生を終える人達が大半なので、そのような発言は無理がないのかも知れません。
そんな中、自分が望んだ訳ではないのですが、たまたまメンズ、レディースどちらの世界でも実務に携わってきた身としては、全ての経験を無駄にせず「テーラード」という形で活かしていく道しか思い付かない。
メンズの素材と技術を駆使し、レディースという形で新しい世界観を提示し続け、皆様個人がお持ちの
「感性の幅を少しでも広げて共感してもらうことは可能」だと。
時代を進めるのは、その場その場で上手く順応してきた人達ではなく、
心の引っ掛かりに違和感を持ちながら、少し道を外れた人達であることは色んな分野で証明されています。
新しい世界観が人々の心に刺さることを切に願って、精進いたします。