製作記録ブログを書くにあたって・・
ビスポークスーツ(フルオーダースーツ)には、それ相応の仕立てが存在します。表からは見えない、分からないものがビスポーク仕立てには数多くあり、細かな作業に裏打ちされて「シンプルな表の顔」となります。
メンズの技術を飛躍させ、格調高いレディースオーダースーツを作るにあたっての格闘の記録です。
「こんなことしてるのか・・」と感じていただけたら幸いです。
<パーツ作り>
心理的負担はそれほど大きくはないが、
縫っていてあまり面白味を感じない段階です。
背広の先輩方が言っておられました。
「パーツ作り、邪魔くさい」って。
パーツが揃ってやっとスタートラインに立てた気がします。
<ポケット作り途中>
背広を一着丸々縫う人で「ポケット作るの好き」という人に出会ったことがありません。神経遣う、綺麗が当たり前で、面倒くさいが本音です。
この後の工程で関門がいっぱい待ち受けていて、
ポケット作りは浅瀬でパシャパシャレベルです。
<毛芯作り>
背広の中に入っている芯で、縁の下の力持ち。
手で縫っていて縫製者の中でも一握りの
「背広ガチオタ達」しか作れません。
微妙なラインを形作り、見栄えと着心地に影響します。
王様である紳士服地を支える「エースの執事」です。
<芯据え工程>
紳士服地という王様は、
「王様のエースの執事である毛芯」の支えがなければ、
「背広という立派な王様」にはなれません。
縫製者はこの工程で神経をすり減らします。
背広が長期に渡って美しい顔を保てるようにするのが、
この工程のミッションです。
<ラペルに「ハザシ」という工程>
ハハハと単に縫うのではなく、ウールの芯と表地を一体化します。
ここでウールの芯に、ゆとりを入れるテクニックが必要。
それによりラペルにボーンと丸味と迫力が出て、
高級感ハンパなくなり、
洋服の王様、背広のシンボルとなります。
<前見頃をトルソーに貼り付け>
一旦この段階でトルソーにピン打ちして、
「狙った服のツラ」が出せているかの確認。
(必須ではありません!)
確認と称して
「背広の美しさを堪能するオアシスタイム」であることを
否定する技術者はいないんじゃないか・・・
<裏の顔は表の顔を作る>
背広に入っている「手縫いのウールの芯」
手縫いにより芯に弾力性が生まれ、背広の柔らかさに繋がる。
一見ごちゃごちゃしているのは全て表の顔のため、
目に見えない着心地のため。
背広を構成する全てが宝です。
<高温アイロン>
中学の家庭科でアイロン温度、毛=160℃と教わりましたが、そこはガン無視で180℃以上で使います。
(遥かに高温で作業する方も多数です)
蒸気と高温のマッチングで、紳士服地という高密度の織物を歪ませ、無理のない曲線を生み出します。
<肩パッドを手作りする意味>
求めるものが既製ではないからです。
それに加えて、細部まで追い求める自分がいることも事実です。
1人で作り上げるから全て自分の責任になります。
やっと作業に面白味が出てくる段階です。
<肩周りの確認>
手を突っ込んで、手のひらをパカパカ動かして、
肩甲骨でているか?
前肩出ているか?
首に吸い付くか?
を見ています。
しかしこの画像、大事なことしているのに映えないな・・
<メンズとレディースの仕立ての違い>
テーラードを仕立てる技術は重く、尊い。
先達に教わった技術で、長年メンズのビスポークスーツ作りに従事してきた経験を基にレディーススーツを作ります。メンズとレディースの違いはパターン設計のみで、縫製に関しては基本メンズを踏襲していますが、実はメンズよりもレディースの方が大幅に手がかかります。
目の肥えた方に見られても唸るような「本格的なレディースオーダースーツ」を目指します。