メンズ仕立てレディーススーツ01

製作記録ブログを書くにあたって・・

 

ビスポークスーツ(フルオーダースーツ)には、それ相応の仕立てが存在します。表からは見えない、分からないものがビスポーク仕立てには数多くあり、細かな作業に裏打ちされて「シンプルな表の顔」となります。

 

メンズの技術を飛躍させ、格調高いレディースオーダースーツを作るにあたっての格闘の記録です。

「こんなことしてるのか・・」と感じていただけたら幸いです。

 

 


メンズ仕立てのレディーススーツ
メンズ仕立てのレディーススーツ

<パーツ作り>

心理的負担はそれほど大きくはないが、

縫っていてあまり面白味を感じない段階です。

背広の先輩方が言っておられました。

「パーツ作り、邪魔くさい」って。

パーツが揃ってやっとスタートラインに立てた気がします。

 


<ポケット作り途中>

背広を一着丸々縫う人で「ポケット作るの好き」という人に出会ったことがありません。神経遣う、綺麗が当たり前で、面倒くさいが本音です。

この後の工程で関門がいっぱい待ち受けていて、

ポケット作りは浅瀬でパシャパシャレベルです。

 


<毛芯作り>

背広の中に入っている芯で、縁の下の力持ち。

手で縫っていて縫製者の中でも一握りの

「背広ガチオタ達」しか作れません。

 

微妙なラインを形作り、見栄えと着心地に影響します。

王様である紳士服地を支える「エースの執事」です。

 


<芯据え工程>

紳士服地という王様は、

「王様のエースの執事である毛芯」の支えがなければ、

「背広という立派な王様」にはなれません。

縫製者はこの工程で神経をすり減らします。

 

背広が長期に渡って美しい顔を保てるようにするのが、

この工程のミッションです。

 


<ラペルに「ハザシ」という工程>

ハハハと単に縫うのではなく、ウールの芯と表地を一体化します。

ここでウールの芯に、ゆとりを入れるテクニックが必要。

それによりラペルにボーンと丸味と迫力が出て、

高級感ハンパなくなり、

洋服の王様、背広のシンボルとなります。

 


<前見頃をトルソーに貼り付け>

一旦この段階でトルソーにピン打ちして、

「狙った服のツラ」が出せているかの確認。

(必須ではありません!)

確認と称して

「背広の美しさを堪能するオアシスタイム」であることを

否定する技術者はいないんじゃないか・・・

 


<裏の顔は表の顔を作る>

背広に入っている「手縫いのウールの芯」

手縫いにより芯に弾力性が生まれ、背広の柔らかさに繋がる。

一見ごちゃごちゃしているのは全て表の顔のため、

目に見えない着心地のため。

背広を構成する全てが宝です。

 


<高温アイロン>

中学の家庭科でアイロン温度、毛=160℃と教わりましたが、そこはガン無視で180℃以上で使います。

(遥かに高温で作業する方も多数です)

 

蒸気と高温のマッチングで、紳士服地という高密度の織物を歪ませ、無理のない曲線を生み出します。

 


<肩パッドを手作りする意味>

求めるものが既製ではないからです。

それに加えて、細部まで追い求める自分がいることも事実です。

1人で作り上げるから全て自分の責任になります。

 やっと作業に面白味が出てくる段階です。

 


<肩周りの確認>

手を突っ込んで、手のひらをパカパカ動かして、

肩甲骨でているか?

前肩出ているか?

首に吸い付くか?

を見ています。

しかしこの画像、大事なことしているのに映えないな・・

 


<メンズとレディースの仕立ての違い>

テーラードを仕立てる技術は重く、尊い。

先達に教わった技術で、長年メンズのビスポークスーツ作りに従事してきた経験を基にレディーススーツを作ります。メンズとレディースの違いはパターン設計のみで、縫製に関しては基本メンズを踏襲していますが、実はメンズよりもレディースの方が大幅に手がかかります。

 

目の肥えた方に見られても唸るような「本格的なレディースオーダースーツ」を目指します。